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活動記録

FIELD NOTE

「寂しい顔をしている」。石巻・荻浜のWhite Deerへ

午前中は金華山で本物の鹿を撮り、午後は海辺に立つ白い鹿のアートを見に行く。狙ったわけではないのに、なんだか鹿に縁のある一日になりました。

2026年8月20日、金華山から続くBULLETISの記録です。

活動日: 2026年8月20日

荻浜の浜に立つ白い鹿の彫刻。大きな角を広げ、空を見上げている。背後には海と対岸の低い山並み
遠くの空を見上げる、White Deer (Oshika)。 Photo: Naofumi Otsuki

金華山のあと、もうひとつの目的地へ

金華山の記事の最後に書いたとおり、午前中に訪れた金華山から鮎川港へ戻り、「ホエールタウンおしか」の海鮮レストランでお昼を食べていました。

この日は金華山へ行くことが一番の目的だったので、そのあとの予定は決めていません。食べながら次はどこへ行こうかと話し、とりあえず「White Deer」を見に行ってみよう、ということに。

Instagramで見かけることはあっても、実際に訪れるのは初めて。牡鹿半島に白い鹿のアートがある、という程度の知識しかありませんでした。

仙台から牡鹿半島まで来る機会もそう多くはないので、せっかくなら行ってみよう。そんな軽い気持ちで車を走らせます。

本当に、この道で合っているのか

荻浜に近づくと、まず大きな防波堤が見えてきました。一見すると進入禁止のようですが、門は開いています。

抜けた先は海岸と、漁師さんが作業しているような場所。どこから入るのか、正直まったく分かりません。「本当にここ?」なんて話しながら、違う道に入りかけてバックしたり。

「White Deerはこちら」の看板と矢印を見つけ、それに従って進むと、今度はブイに囲まれた砂利道。すぐ隣は海です。

そのまま行くと、駐車線もない広めのエリアに出ました。車を降りると、潮風と静かな波の音。ここまで少し不安だったのに、外に出てみると不思議と心地のよい場所でした。

砂利敷きの広場の先に続く細い道。入口に注意書きの看板と案内板が立ち、右手は木が茂る斜面
車を降りたところ。ここから先は歩いていきます。 Photo: TANAYAN

案内には「徒歩7分」とあります。

この先は崖なのか山道なのか、大丈夫かなと心配になる道が続いていますが、看板を信じて歩いてみることに。

少し進むと、人の声が聞こえてきました。どうやら先客がいるようです。平日でも訪れる人がいるんだな、と思いながら進んでいくと……。

見えてしまいました。できれば最後に「せーの」で見たかったのですが(笑)。

遠くに、白い鹿が立っています。

木々に囲まれた砂利道。左手に海と対岸の山並みがのぞき、道は奥へ続いている
看板を信じて、この道を進みます。 Photo: TANAYAN
木の枝ごしに見える入り江。対岸の白い浜に、小さく白い鹿の彫刻が立っている
見えてしまった瞬間。奥に白い鹿。 Photo: TANAYAN

想像していたより、ずっと大きい

近づいて、まず思ったこと。とにかく、でかい。

遠くからでも大きいとは思っていましたが、近くで見るとさらに迫力があります。こんな海辺の、少し奥まった場所に、これほど大きなアート作品があるとは。

もし存在を知らずに歩いてきたら、世紀の大発見をした気分になりそうです(笑)。

小高い砂地に立つ白い鹿の彫刻と、その足元で両手を上げて立つ人物。鹿は人の何倍もの高さがある
足元に立つと、この大きさ。 Photo: TANAYAN

作品の周囲には海が広がり、足元には白い貝殻も。人の気配が少なく、どこか秘密基地のような雰囲気もあります。

さっそく2人で写真と動画を撮影。正面はどこなのだろう、なんて考えながら、少し離れてみたり、角度を変えてみたり。

白い鹿と、その向こうに広がる海。ただ作品を撮るだけでなく、この場所の景色と一緒に残したくなるようなロケーションでした。

「なんか、寂しい顔をしている」

一通り撮影を終えた頃、Naofumiがぽつりと一言。

なんか、寂しい顔をしている。

言われて、改めて鹿の顔を見てみました。

たしかに。

それまでは作品の大きさや造形、背景の海との組み合わせばかりを気にしていて、鹿がどんな表情をしているのかは、あまり考えていませんでした。

一頭だけで空を見上げている姿。どこか寂しく、何かを想っているようにも見えます。東日本大震災の記憶も重なって、故郷に帰りたいと思っているのだろうか、なんてことも考えました。

もちろん、そう感じたのは私たちの勝手な想像です。ただ、同じ作品を撮影していたはずなのに、その一言で少し見え方が変わった気がしました。

白い鹿の彫刻を下から見上げたところ。顔は空のほうを向き、大きな角が横に広がっている
言われて初めて、顔を見ました。 Photo: Naofumi Otsuki

あとから知った、「迷い鹿」のこと

足元には作品のプレートがあって、写真には撮っていたのですが、ちゃんと読んだのは帰ってからでした。

「White Deer (Oshika)」は、名和晃平さんの作品。制作は2017年です。

プレートには、鹿が古来から「神使」や「神獣」として信仰のなかで親しまれてきたこと、近年の日本では鹿が増え続けていて、人里に時々現れる鹿は「迷い鹿」と呼ばれること、そしてこの作品が、インターネット上に現れた迷い鹿(鹿の剥製)を取り寄せ、3Dスキャンして得たデータをもとに制作されたことが書かれていました。

そして、その姿は遠くの空を見上げ、旅の原点である瀬戸内海・犬島の方を向いている、と。

犬島の方を向いている。

それを知って、Naofumiの言葉を思い出しました。

あの鹿が何かを寂しく思っているのかは分かりません。でも、何も知らずに見て感じたことと、あとから知った制作の背景が、どこかでつながったような気がしました。

最初から説明を読んでいたら、また違う見方をしていたかもしれません。

先に見て、撮って、感じる。それから作品のことを知る。そんな順番も、面白いものですね。

白い貝殻まじりの地面に置かれた黄色い作品プレート。「White Deer (Oshika)」「名和晃平 Kohei Nawa 2017」と作品解説が記されている
足元にあった作品プレート。読んだのは帰ってから。 Photo: Naofumi Otsuki

また、違う時間に

公式サイトでは、この作品は「時刻によって表情を変える『迷い鹿』」と紹介されています。

私たちが訪れたのは午後2時頃。見たのは、夏の午後の姿だけです。

そう言われてみると、空の色や光の当たり方が変われば、まったく違う表情に見えるのかもしれません。夜空を見ている白い鹿も、朝日を浴びた白い鹿も、夕日に照らされた白い鹿も、見てみたいと思いました。

金華山で出会った本物の鹿と、荻浜で出会った白い鹿。同じ日に2つの場所で鹿を撮ることになるとは、思ってもいませんでした。

予定をきっちり決めずに、気になった場所へ行ってみる。こういう寄り道から生まれる発見も、BULLETISとして残していきたいと思います。

木々の枝葉ごしに見える白い鹿の彫刻と、その向こうに広がる入り江と山
帰り道、木の間からもう一度。 Photo: Naofumi Otsuki

このあと私たちは、さらに女川へ。金華山から始まった一日は、もう少しだけ続きます。

LOCATION INFO

実際に行ってみたい方は、公式の情報もあわせて確認してみてください。

この場所を、写真や動画、文章でも。

CREDIT

Writing
BULLETIS / TANAYAN
Photo
TANAYAN / Naofumi Otsuki
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